「私」や「君」「あなた」など、人を指す語を「人称代名詞」と言います。そのなかでも話し手(=私)を指す語を「1人称代名詞」、聞き手(=あなた)を指す語を「2人称代名詞」と言います。
今回は、めーらむにの1人称代名詞と2人称代名詞を中心に使い方をご紹介します。
みなさんの地域の人称代名詞についても、めーらむにとの違いがあればコメントで教えてください。
人称代名詞の体系
1人称代名詞、2人称代名詞を紹介します。
| 単数 | 複数 | |
| 私 | ばぬ[私] ばー[私が/私の/私は] | 【聞き手を含まない】 ばんだー[私たちは/私たち/私たちの] 【聞き手を含む】 ばがだー[私たちは/私たち/私たちの] ばがー[私たちは/私たち/私たちの] |
| あなた | わぬ[君] わー[君は/君が/君の] | わだー [君たち/君たちは/君たちが/君たちの] |
| おまえ | わんざー、わらざー、わるざー | わんざーだー |
いろいろな「私」と「あなた」
上の表を見てもわかる通り、後ろに続く助詞によっていろいろな形の「私」と「あなた」があります。
いろいろな「私」
| 私は | ばーや 幸子でぃどぅ いずゆー (私は幸子と言います) | 助詞「や」が後ろに続くときは「ばー」という形になる。 (中には「ばぬ」の後ろに助詞「や」が続いた形の「ばなー」を使う地域もある) |
| 私の | ばー なーや 幸子でぃどぅ あんずゆー (私の名前は幸子と申します) | 「私の」と言うときは「ばー」を使い、助詞は付けない。 |
| 私が | わーや ふーな、ばー ふん (君はするな、私がする) | 「私が」と言うときは「ばー」を使う。 |
| 私が | ばーどぅ うぬ さーふ ふんゆー (私がこの仕事します) | 「私が」と強調したいときに、係助詞「どぅ」を使う。 「どぅ」が後ろに続くときは「ばー」という形になる。 |
| 私に | ばぬかい くれー ひーりゃ (私にこれをください) | 助詞「かい」が後ろに続くときは「ばぬ」という形になる。 後ろに助詞が続くときは基本的に「ばぬ」になる。その例外は「や」や「どぅ」など(「ばーや はらぬ(私は行かない)」「ばーどぅ ふぉーだ(私が食べた)」など) |
| 私と | ばんとぅ はらなー (私と行こう) | 「ばぬ」の後ろに助詞「とぅ」が続くと「ばぬとぅ」になるが、発音しにくいため「ばんとぅ」になったと考えられる。 |
いろいろな「あなた」
| 君は | わーや たるどぅ やろーる? (あなたはどちら様ですか?) | 助詞「や」が後ろに続くときは「わー」という形になる。 |
| 君は | わー ずぃまげどぅ はる? (君はどこに行くの?) | 「わー」だけでも「君は」という意味になる。 「わーや ずぃまげどぅ はる?」でも同じ意味。 |
| 君の | わー しんしーや たる? (君の先生は誰?) | 「君の」と言うときは「わー」を使い、助詞は付けない。 |
| 君が | ばーや ふぉーらぬ。わー ふぁいやー (私は食べない。君が食べて) | 「君が」と言うときは「わー」を使う。 |
| 君から | わぬがら ふぁいやー (君から食べて) | 助詞「がら」が後ろに続くときは「わぬ」という形になる。 後ろに助詞が続くときは基本的に「わぬ」になる。その例外は「や」や「どぅ」など(「わーや ばがらぬ(君はわからない)」「わーどぅ ふぉーだ(君が食べた)」など) |
| 君と | わんとぅ ばんとぅ まーぞん はらなー (君と私と2人で行こうね) | 「わぬ」の後ろに助詞「とぅ」が続くと「わぬとぅ」になるが、発音しにくいため「わんとぅ」になったと考えられる。 |
日本語には「おまえ」や「てめえ」、「きさま」など卑称と呼ばれる2人称があります。めーらむににも同じような卑称があり、「わらざー」「わんざー」「わるざー」などと呼ばれます。例えば「わんざー さーぐさ(おまえのしわざでしょ)」のように使われます。
また、「うら」は民謡の中で登場する2人称ですが、会話の中では使われません。
複数の形
複数を表すときは基本的に「たー/だー」を付けます。
1人称の複数形には以下の3つの形があります。聞き手を含める「私たち」と、聞き手を含まない「私たち」の区別があることが特徴的です。2人称複数は「わだー」と言います。
| ばんだー | 私たちは/私たち/私たちの | 聞き手を含まない |
| ばがだー | 私たちは/私たち/私たちの | 聞き手も含めて我々のこと |
| ばがー | 私たちは/私たち/私たちの | 「ばがだー」と同じ意味。 特殊なものにつく傾向がある。 |
ばんだー(聞き手を含まない「私たち」)
「ばんだー」は、聞き手(話している相手)を含まない「私たち」を指します。
| 私たちは | ばんだーや はらぬ。わだーや はるん? (私たちは行かない。君たちは行くの?) | 助詞「や」が後ろに続くと「私たちは」という意味になる。聞き手を含まない。 |
| 私たちは | ばんだー きょーだい ゆー (私たちは兄弟です) | 「ばんだー」だけでも「私たちは」という意味になる。聞き手を含まない。 |
| 私たちの | うぬ ぷぃとー ばんだー しんしー ゆー (あの人は私たちの先生です) | 「私たちの」と言うときは後ろに助詞を付けない。 |
ばがだー(聞き手を含む「私たち」)
「ばがだー」は、聞き手(話している相手)を含む「私たち」を指します。
| 私たちは | うったーや はらぬっちょ。ばがだーや はららー (彼らは行かないって。私たちは行こうねー) | 助詞「や」が後ろに続くと「私たちは」という意味になる。聞き手を含む。 |
| 私たちは | ばがだー まーぞん はらなー (みんなで一緒に行こうね) | 「ばがだー」だけでも「私たちは」という意味になる。聞き手を含むので「その場にいるみんなで行こう」という意味。 |
| 私たちの | ばがだー すぃま (私たちの故郷) | 「私たちの」と言うときは後ろに助詞を付けない。 |
ばがー(聞き手を含む「私たち」)
「ばがー」は「ばがだー」と同じ意味です。
| 私たちは | ばがー まーぞん はらなー (みんなで一緒に行こうね) | 「ばがだー」と同じ意味。聞き手を含むので「その場にいるみんなで行こう」という意味になる。 |
| 私たちの | ばがー すぃま (私たちの故郷) | 「私たちの」と言うときは後ろに助詞を付けない。 |
わだー(あなたたち)
2人称複数は「わだー」と言います。
| 君たちは | わだーや ずぃまがらどぅ きー? (君たちはどこから来た?) | 助詞「や」が後ろに続くと「君たちは」という意味になる。 |
| 君たちは | わだー ずぃまげどぅ はる? (君たちはどこに行く?) | 「わだー」だけでも「君たちは」という意味になる。 |
| 君たちの | わだー しんしーや たるどぅ やろーる? (君たちの先生は誰ですか?) | 「君たちの」と言うときは後ろに助詞を付けない。 |
2人称複数の卑称として「わんざーだー」という言い方もあります。日本語の「おまえたち」や「てめーら」のような言い方です。
使ってみよう
学んだ表現を実際に使ってみましょう。

わーや たる?
君は誰?

ばーや 太郎
僕は太郎

わーなーや のーでぃどぅ あんじょーる?
お名前は何とおっしゃいますか?

ばー なーや のぼるでぃどぅ いず
私の名前はのぼると言うよ
「わー」や「わぬ」という2人称は、目上の人には使わない地域もありますが、めーらむにでは目上の人に使う尊称形の「あなた」は特にないそうです。ただし、目上の人に対して話すときは必ず敬語を使います。

わー しんしーや たる?
(君の先生は誰?)

ばー しんしーや 山城先生どぅ やるゆー
(私の先生は山城先生です)

うれー んまはーきしゃーそーなー
(それ おいしそうだね)

わぬがら んこーりゃー/ふぁいよーりゃー
(あなたからお召し上がりください)
「んこーりゃー」と「ふぁいよーりゃー」はどちらも「召し上がってください」という敬語表現です。「んこーりゃー」の方が「ふぁいよーりゃー」よりも敬意が上の表現です。

わだー ふたーるぃや にーそーなー。
きょうだいどぅやる? いちふどぅやる?
(あなたたち2人は 似ているね。
姉妹なの? いとこなの?)

ばんだー きょうだいゆー
(私たちは姉妹です)
「きょうだい」という語は「兄弟姉妹」を指します。

わだー ずぃまげどぅ はる?
(あなたたちはどこに行くの?)

ばんだーや 学校げどぅ はるゆー
(私たちは学校に行きます)
ここではおばあちゃんが通学途中の子どもたちに「ずぃまげどぅ はる?」と聞いています。子どもたちが「ばがだー」ではなく「ばんだー」を使っているのは、おばあちゃんを含まない「私たち(=子どもたちだけ)」という意味です。

わだー たる?
(君たちは誰?)

ばんだー たかしぬ うやぐだらー
(私たちは たかしの親戚だよ)
「わだー たる?」は「わだーや たる?」と言うこともできます。
「ばんだー たかしぬ うやぐだらー」は「ばんだーや たかしぬ うやぐだらー」と言うこともできます。

わだーや ずぃまがらどぅ くぃた?
(あなたたちはどこから来たの?)

ばんだーや 大阪がらどぅ くぃたゆー
(私たちは大阪から来ました)
同年代や年下の人に対しては「わだーや ずぃまがらどぅ きー?」や「わだーや ずぃまがらどぅ くぃた?」と尋ねることができます。
相手が年上の場合は「わだーや ずぃまがらどぅ おーった?」という敬語表現を使いましょう。さらに上の敬語表現にするには「わだーや ずぃまがらどぅ おーったねーらー?」と尋ねることができます。

たーどぅ ばー くゎーすぃどぅ ふぁいだー?
(誰が私のお菓子を食べたの?)

ばーどぅ ふぁい
(僕が食べたよ)
「たーどぅ ばー くゎーすぃどぅ ふぉーだ/ふぁいだー?」は同年代や年下に対する表現です。年上に対しては「たーどぅ ばー くゎーすぃ んこーった?」と敬語表現を使います。
今日のレッスンはここまでです。
またらーめ。
参考文献:
横山晶子『0から学べる島むに読本 琉球沖永良部島のことば』
宮城信勇『石垣方言辞典 本文編』沖縄タイムス社
松原秀吉『宮良村(むら)方言集』

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